"Cioppino"(チョッピーノ)を作る
“Cioppino"(チョッピーノ)はイタリア料理では無く、USAへ移民したジェノヴァの人々がサンフランシスコで流行させ定着させたイタリア風USA料理の1つ。イタリア北西のリグリア地方やフランス南東のプロヴァンス地方などに見られる地中海風の海鮮トマトスープ料理を元にUSA向けにアレンジされたもの。(参考1)
参考として先ず food network(フード・ネットワーク)の Michael Chiarello (ミカエル・チャレロ)のレシピを確認しました。(参考2)
ミカエル・チャレロのチョッピーノの材料(日本語SI単位訳、1人前換算、参考2)
- 魚出汁 236.6 ml
- サフラン 0.125 つまみ
- オリーブ油 11.1 ml
- にんにく 0.625 片(大きめのもの、潰す)
- たまねぎ 0.25 個(中くらいのもの、刻む)
- フェンネル(茎) 0.125個(薄切り)
- グレーソルトと黒胡椒 適宜
- フェンネルシード 1.85 ml(焼く)
- ベイリーフ(月桂葉) 0.125 枚
- 乾燥オレガノ 0.616 ml
- トマトペースト 3.70 ml
- プラムトマト(ソース向け品種のトマト) 99.2 g(刻む)
- 辛口白ワイン 59.1 ml
- ペルノー(≃アブサン) 14.8 ml
- ハラペーニョ 0.625 個
- パセリ葉 7.39 ml(刻む)
- バジル葉 5.55 ml(刻む)
- タラゴン葉 3.70 ml(刻む)
- 小ぶりな二枚貝(≃あさり) 113 g
- 蟹脚 56.7 g(調理済み≃茹で済み)
- 大海老 56.7 g(剥く)
- 無塩バター 397 g(室温)
- オヒョウ 113 g(皮を剥ぐ)
- マゼランツキヒガイ(≃ホタテ) 42.5 g
※グレーソルトはフランスのグアランデ沼地に流入した海水から作られる文字通り灰色の天然塩で、豊富なミネラルと旨味を持った料理人に人気の塩です。(参考5)
具が1人前あたり 383 g (貝の可食部4割、海老の可食部9割、魚肉フィレ肉の可食部は10割と仮定すると可食部は 227 g )。無塩バターが1人前あたり 397 g というレシピにUSA感が高まります😅 スープは水の蒸発で減る事を考慮すると 250 ml くらいが一人あたりのお皿へ盛られる量になるのかな、と思います。
このレシピを見るとバターの量が1桁おかしい気もしますが、USAなのでたぶんこれが本場(USAサンフランシスコ)風と思います。
food network には他にも Cioppino のレシピがあります。次に Giada De Laurentiis (ジャーダ・デ・ラウレンティス)のレシピも確認します。
ジャーダ・デ・ラウレンティスのチョッピーノの材料(日本語SI単位訳、1人前換算、参考3)
- オリーブ油 7.40 ml
- フェンネル(茎) 0.167 個(薄切り)
- たまねぎ 0.167 個(刻む)
- エシャロット 0.5 個(大きめのもの、刻む)
- 塩 1.64 ml
- にんにく 0.667 片(大きめのもの、刻む)
- 乾燥赤唐辛子 0.616 ml(砕く)
- トマトペースト 9.86 ml
- トマトのダイスカットの缶詰め(汁ごと) 132 g
- 辛口白ワイン 19.7 ml
- 魚出汁 197 ml
- ベイリーフ(月桂葉) 0.167 枚
- あさり 75.6 g(洗う)
- ムラサキイガイ(≃ムール貝) 75.6 g(洗う、足糸を取る)
- 生海老 75.6 g(洗う、背わたを取る)
- オヒョウまたはサーモンなどのフィレ肉 113 g
具の量は 340 g (貝の可食部4割、海老の可食部9割、魚肉フィレ肉の可食部は10割と仮定すると可食部は 242 g )。スープは水分が煮込みで蒸発して1人前あたり 190 ml くらいになるのかなと思います。
2人のチョッピーノのレシピを比べると面白いですね。バターなど大きな違いもありますが基本的には「トマトと魚出汁で煮込んだ魚介のスープ」をチョッピーノと言って良さそうです。"リグリアやプロヴァンスの辺りの地中海料理風のスパイスとハーブを使った"が付くとよりそれらしくなり、"USAでアレンジされたUSA料理"っぽく(バターをどかんと放り込むとか)すると本場(USA)感が高まるような認識になりました。
類似の料理としてはフランス料理の Bouillabaisse (ブイヤベース)が有名で日本人にも少しは通じが良いと思います。同じく food network で紹介されている Bobby Flay (ボビー・フレイ)のブイヤベースのレシピ(参考4)を見ると、最終的な作り方や材料の紹介はシンプルですが、フランス料理らしさを強く感じるスープ造りへの強い拘りとそこへ時間をかける様子がわかりやすく先の2つのチョッピーノのレシピと比べると面白いですね。"似て非なるもの"の面白さがあります。
伊藤さんの日本風チョッピーノのレシピ
さて、今夜の手元にある材料で適当にチョッピーノ風のトマトと魚出汁の魚介のスープを作ってみましょう😃
材料の使い切りの都合、3人前から4人前のレシピです。
- トマトペースト 大匙 2
- 調理用品種のトマトの水煮の缶詰め (汁ごと) 400 g
- あご出汁(九州辺りで一般的なトビウオで取る出汁)200 ml
- オリーブ油 大匙2
- たまねぎ 1個(JA規格のL程度、刻む)
- にんにく 2片(潰して刻む)
- 青南蛮(げきから) 2本(刻む)
- 辛口日本酒 大匙 4
- あさり 350 g
- 冷凍シーフードミックス(えび、いか) 180 g
- 蛸足 217 g (5mm厚程度のぶつ切り)
- 小松菜 4 把(刻む)
- キャラウェイシード 小匙 1/3
- パプリカ粉 小匙 1/3
- 乾燥バジル 小匙 1/3
- フェヌグリークシード 小匙 1/3
- セージ 小匙 1/3
- ローズマリー 小匙 1/3
- 月桂葉 1 枚
- 塩 小匙 ½
- 黒胡椒 小匙 1/3
“米欧折衷"で産まれた Cioppino を"和米折衷"して"日本の欧米風料理"にアレンジしてみました。 Cioppino はちょっとしたパーティー料理で集まった仲間でわいわい美味しい魚介を手掴みで殻を剥いたり割ったりしながら楽しんで食べる料理、というイメージが私にはありますが、今回のアレンジは日本の普段の食卓の洋風料理の感じにしてみました。あごだしの和風フュメ・ド・ポワソンも予想以上に美味しく、欧米風のトマトスープ料理にもよく馴染んでくれました。アレンジが美味しく成功すると嬉しいです😋
Note: 青南蛮の量は上記のレシピで作るとジャワカレースパイシーブレンドより1段階辛いくらいに仕上がります。もし参考にされる場合は、食べる方の辛さの好みに併せて量を調整して下さい。
おまけ写真
↓しばしば登場するこの容器、製パン用のアイテムで本来はハンバーガーバンズ用の焼き型だったりします。温度を一定にできすぐに揚げたり炒めたり焼いたりできるアラジンのオーブンと組み合わせると便利で何かと重宝しています。食パンと一緒に並べて目玉焼きを作るのにも使える優れもの😃
↓1缶に汁も含めて400g入りのよくある調理用トマトの水煮。たいていプラムトマト系の調理用品種が使われています。甘さや果汁感を重視した日本で一般的なトマトの品種を使うよりも旨味が強くスープやソースなど加熱調理して食べるならこちらというトマトです。これを使うところに、生食用のトマトを使うとソレジャナイ旨味不足の料理ができます。八百屋でもたまに生ものの調理用トマトが並んでいる店があるので、入手できるときには使うと良いです。
↓KALDIにたいてい常備されているトマトペースト。トマトケチャップでも代用できますが、トマトケチャップは塩気が強いので、その分だけ他の調理工程で使う塩の量を減らすなどちょっと工夫が必要になります。トマトペースト≃塩辛くないトマトケチャップ。
↓あごだし。あご=トビウオは白身魚で、欧風のフュメ・ド・ポワソンに比較的近い上品でバランスの取れただしを料理好きの日本人にはお馴染みのだしパックから手軽に取れます。九州の辺りで一般的なだしなので他の地方では通販でお取り寄せ入手になりますが、素麺や温かいうどんのスープによくあいます。東日本、北日本で一般的な魚出汁は赤身魚の鰹、鯖、鰯など癖が強く旨味が濃いものなので、これでフュメ・ド・ポワソンを作ると調味のバランスを濃い出汁に持っていかれないように工夫するのに苦労するか、諦めて魚粉まで入れて激にぼ系のスープにしちゃうか、みたいになります😅
↓今回は他の材料が冷凍シーフードミックスで具としての存在感が薄いので、あさりと加える Cioppino らしい生の材料としての蛸は少し厚めに切ってみました。レシピでは5mmくらいにって書いたけど、実際に今回作ったのは厚さ1cmくらい。歯の治療中だったらこれは危なかったかも、という程度に歯応えが強く存在感があります。そんなわけでレシピでは安全圏として5mmくらいと明記しました。歯や顎に心配の無い方は1cmでも、あるいは心配の強い方は予め柔らか煮を別鍋で作ってしまうと良いかもしれません。
↓同じタイミングで同じ鍋へ使うスパイスは調理前に1つの皿に取り分けておく😃